mark 【土曜講座「先人秘話」第2回報告】

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日時:平成31年3月16日(土) 10時~12時
場所:遠野市立図書館1階 視聴覚ホール
講師:菊池 健(遠野文化研究センター運営委員)
内容:柳田国男が先生と慕った伊能嘉矩

報告:
 今回は、長年にわたり伊能嘉矩を研究している菊池さん(遠野文化研究センター運営委員)が講師を務め、「柳田国男が先生と慕った伊能嘉矩」と題して開催されました。
 柳田国男といえば『遠野物語』の著者として有名ですが、貴族院書記官長を務めた高級官僚でもあり、全国の3000人を超える学者や研究者とのパイプを持つ著名人です。
 一方、伊能嘉矩は遠野出身の郷土史家で、台湾原住民の研究も行い『台湾文化志』を著した人類学者でもあります。経歴だけを比べると、柳田の方が知名度的にも勝っているように思われます。しかし実際は、柳田が伊能を「先生」と慕っていたのです。菊池さんは、柳田が生涯で「先生」と呼んだ相手はわずか数人しかおらず、伊能がその中にいたことに大きな衝撃を受けたと話します。
 柳田が遠野を訪れたのは三回ですが、いずれも伊能に関連していました。初回は、『遠野物語』出版前に伊能と対面し、遠野の歴史について話をしました。二回目は三陸沿岸を北上する道中に、わざわざ遠野に立ち寄り伊能と会っています。そして三度目の遠野訪問は、伊能が亡くなった翌年に行われた追悼式に出席するためでした。
 柳田は伊能の死後も、伊能の著書である『遠野方言誌』等の発刊に尽力し、自ら序文を添えるなど、その敬慕ぶりが伺えます。さらに、最晩年の『定本柳田国男集』(全35巻)でも伊能へ捧げた序文を紹介しており、柳田が生涯畏敬の念を示していたと言えるでしょう。
 菊池さんは、伊能が亡くなって3年後に出版された『台湾文化志』における柳田の序文は、弔辞、つまりあの世に旅立った伊能を惜しんで書いたと言えるくらい格調高く、他のものとは比べられない文章としか私には思えない、本当に伊能をよく知っていなければ書けない序文である、と力説します。
 最後に菊池さんは、「柳田は伊能の緻密な研究とその姿勢に尊敬の念を抱いたのではないでしょうか。伊能については少なくとも、佐々木喜善と同じレベルに好評価できるよう今後顕彰活動が必要だと思います」と話しました。
 遠野文化研究センター赤坂所長は、「伊能嘉矩という学者が社会の中でどう評価されていたか、なかなか見えないところがあると思う。掘り起こしというのは始まったばかりかもしれない。この講座がその嚆矢となれば」と締めくくりました。

先人2 ①  先人2 ②

カテゴリー 市民講座