mark 平成29年度「遠野学会」報告


日時    :平成30年1月20日(土)  午後1時30分~午後4時
場所    :遠野市立図書館 視聴覚ホール
発表内容 :(1)柳田國男が師と仰いだ伊能嘉矩
         元遠野物語研究所研究員 菊池健 氏
       (2)『遠野物語』の可能性を最大化する取り組み「to know」について
         遠野市地域おこし協力隊 富川岳 氏
       (3)商のチカラで農を世界から守る―28年目の農商連携―
         岩手県立遠野緑峰高等学校
       (4)私達高校生に求められていること―次世代リーダー養成塾に参加して―
         岩手県立遠野高等学校
       (5)『上宮守伝』から
         遠野市史編さん委員 菅原伴耕 氏

報告:
 1月20日(土)に平成29年度遠野学会を開催しました。これは遠野地方の文化について調査・研究及び文化活動等に携わっている個人、団体、学校の方々に、その成果や業績を発表・紹介していただく会で、遠野市民の学習の場とし、遠野における文化活動等の発展・継承を目的としています。今年は5つの個人、団体、学校に発表していただきました。

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会場の様子

 元遠野物語研究所研究員の菊池健氏は、昨年生誕150年を迎えた遠野出身の人類学者伊能嘉矩について報告しました。柳田國男が師と仰いだのは伊能嘉矩だったと確信が持てるようになるまでの過程やそれを裏付けるものを、『定本柳田國男集』などを用いて独自の見解を交えながら二人の関係、そしてその周辺の人々の関係性も詳しく解説しました。「『遠野物語』はたまたま遠野という土地で聞き書きをしたから『遠野物語』になったと書いている本もあるそうですが、柳田にとっては遠野の物語でなければならなかった。伊能は『石神問答』、『遠野物語』の成立ばかりでなく、その後の柳田の人生にまで間違いなく大きく影響を与えた一人ではなかったでしょうか」とまとめました。

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元遠野物語研究所研究員の菊池健氏

 地域おこし協力隊として平成28年から様々なプロジェクトを展開し活動している富川岳氏は、「to know」という取り組みについて紹介しました。これは『遠野物語』をはじめ、自然、伝統芸能、食、手仕事、馬や動物との共生といった遠野の素晴らしい文化や地域資源を、時代に合わせて編集し、地域の人や地域を訪れる人と共に学び考えていく取り組みだそうです。平成29年は市民勉強会やフィールドワーク、おもしろ遠野学という勉強会や、小中高との連携事業や視察など、教育中心の活動だったようです。今年は一般社団法人化させて、文化、観光、教育の組織作りを展開する予定で、「文化だけではなくどういった形で『遠野物語』のおもしろさを観光や教育に立体的に広げられるかチャレンジしたい。それだけでなく地域の生業作りにまで落とし込むことで、地域に根差した活動になっていくんじゃないかと考えている。目指す先は、各地域に住む人々、そして各地域を訪れる人々が、どのように地域を知り、画一的ではない土地の魅力に気付くこと」と語りました。

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遠野市地域おこし協力隊の富川岳氏

 遠野緑峰高校は農業と商業の専門学科併設校になって28年目を迎えました。これは全国でも珍しく、遠野緑峰高校生がその特性を活かした日頃の取り組みや成果について発表しました。緑峰高校生産技術科草花班のホップ和紙は、第65回日本学校農業クラブ全国大会プロジェクト発表会で、最優秀賞・文部科学大臣賞を受賞した素晴らしいものです。今年度の取り組みとして「ホップ和紙」の名称(商標)及び製造技術(技術特許)を知的財産権として登録することと、ホップ和紙製品の普及に向け認知度を上げるための販売促進活動を実施することを挙げました。それには資金が必要になります。そこでクラウドファンディング(活動に賛同してくれる人がインターネットを通じて寄付をする仕組み)を利用してはどうか話し合いが進められていますが、高校生が資金集めに踏み切るのは容易なことではないようです。課題は他にもいろいろあるようですが、これまでも地域の課題に取り組んできた遠野緑峰高校の皆さんなら、高校生ならではの若い力で解決し、遠野を元気にしてくれることでしょう。

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岩手県立緑峰高校の生徒

 遠野高校生は、次世代リーダー養成塾に参加して経験したこと、学んだことを発表しました。次世代リーダー養成塾とは経済界や地方自治体が中心となって、全国の志の高い高校生を対象に、日本だけでなく世界を舞台に挑戦する人材育成を目指したサマースクールです。養成塾の講義は、聞くだけのものではなく講義後グループディスカッションが行われるのが特徴です。そしてリーダー塾の中の大きなイベントとしてアジア・ハイスクール・サミットがあり、国内外の高校生が集まり各クラスで議題を決め、それについて話し合うというものだそうです。佐藤さんのクラスでは「紛争・テロを解決するためには」というテーマで話し合いが行われ、途中自分たちにできることは果たしてあるのかと行き詰ってしまったそうです。それでも今できる最善策を考え、相手を受け入れる気持ちを持つことなど3つの考えを出しました。最後に佐藤さんは「私たちは失敗しても立ち直ることができる。だからこそ行動することを恐れてはいけない」と締めくくりました。参加した私たちにも考えさせられることが多くありました。

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岩手県立遠野高等学校の生徒

 遠野市史編さん委員の菅原伴耕さんは、昨年8月に自費出版した『上宮守伝』から、皆さんの集落にもあるのではないかという部分を取り上げて、読みどころなどを紹介しました。「戦後の社会の劇的な変化で昔ながらの習わしなどは押し流されてしまい、昔のことを話せる人が少なくなってしまっている。今生きている私たちの誰かが引き継がなければ、ここで伝説や伝承は途絶えてしまう」と思い、本にまとめたそうです。菅原さんは先祖が西国三十三所巡りをした時の道中記や地図などの貴重な資料を持参し紹介しました。そして巡礼参拝を終えて建てた碑の解説、また、自宅にある古文書に書いてある様々な記録を解説。「若い人たちも意外に地域の歴史を知りたがっている。彼らが目を向けた今こそがチャンスなので地域史を調べることを勧めます。各地域の地域史が集まれば、新しい『遠野物語』になるのではないか」と語りました。

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遠野市史編さん委員の菅原伴耕氏

 報告終了後、参加者から様々な質問や今後の活動を発展させるような意見が出て、参加者全員で学び合い考えることで、これからの遠野を創造する有意義な会となりました。今回は、伝統、歴史、伝承、文化の創造、地域づくり、観光、教育、若い力、など様々なキーワードがありました。遠野文化研究センター赤坂所長はこれらをまとめ、「遠野は『遠野物語』があったということだけでなく、何かが残っている面白い土地だと思う。自分たちで苦労して少しずつ地域をつくっていきましょう。遠野の人、伊能嘉矩は志を持って台湾に行った。みなさん、志を持っていきましょう」と締めくくりました。

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