mark 第3回土曜講座 「遠野の伝説‐『遠野風土草』から‐」報告


 

日時:平成28年7月16日(土) 10:00~11:30

場所:遠野市立図書館1階視聴覚ホール

講師:赤坂 憲雄(文化研究センター所長)、熊谷 航(同センター学芸員)

内容:「遠野の伝説‐『遠野風土草』から‐」

 

報告:

 7月16日に三回目の土曜講座を開催しました。今回は、今年の3月に発刊した遠野学叢書四巻『遠野風土草 天の巻』から四つの伝説を、赤坂憲雄所長、熊谷航学芸員の対談形式で解説しました。
 『遠野風土草』は昭和33年、当時遠野高等学校教員で郷土史家でもあった及川勝穂氏によって発刊されたもので、遠野の伝説などがまとめられています。

 講座では、熊谷学芸員が「又一の滝」、「長者の話」、「遠野に残るアイヌの足跡」、「大同とは何か」について、調査結果や他書籍からの引用、写真を用いて解説しました。それぞれ赤坂所長の見解を交え理解を深めながら、比較や解釈のあり方、アイデンティティの確立といった様々な視点でテーマを掘り進めていきました。
 「長者の話」では、綾織にあったという「朝日長者と夕日長者」を取り上げました。『遠野風土草』では、日が昇る東に建っていたのが朝日長者、日が沈む西に建っていたのが夕日長者であると記していますが、それぞれの日の光を浴びる反対の位置にあったと綾織村郷土史には書かれています。いずれにせよ朝日長者から夕日長者へ座敷童が移ったことで朝日長者は落ちぶれてしまったというのがこのお話です。今回講座を開くにあたり、熊谷学芸員は夕日長者の御子孫に話を伺っており、その方々は「日の出長者、夕暮れ長者」という呼び方をしていたと話しました。家の盛衰に座敷童が関わっていることに対して赤坂所長は、「東北で富の根拠を委ねているのは座敷童ですが、西日本でそれに当たるのは憑き物信仰です。これには商品経済が関与してくるのですが、東北と西日本を対比的に眺めると何か見えてくるのではないでしょうか」と問題提起しました。   
 講義中は、時折笑いも起こり終始和やかなムードでしたが、題材の中には複雑で一筋縄ではいかないものもあり、受講者が集中して耳を傾けている様子が伺えました。熊谷学芸員は、「当時当たり前に知られていたことが、半世紀経って当たり前ではなくなっています。及川勝穂氏の言う通り、この『遠野風土草』は、そうして失われたものを市史編さんによってもう一度発掘するいい機会ではないか、そういうメッセージを伝えてくれているのかと思います」と見解を述べました。
 講座の最後に赤坂先生は、「『遠野風土草』が刊行されたのは昭和30年代初めで、古い時代であればあるほど伝承を集めるには有利な状況になります。しかし、伝承を集めることが大切だという意識・認識がない時代には収集するという発想はなかなか起こりえません。遠野の歴史や文化に関心を持つ若い世代をこの十年で育て、その成果によって今後の遠野の立ち位置が決まってくるのではないでしょうか」と語りました。
 これに対し、赤坂先生から意見を求められた遠野市史編さん委員会委員長の大橋進先生は「各自治会、行政区の方々にも参加いただき、市史編さんに努めたい」と力を込めて発言し、市民参加の重要性を強調しました。

赤坂先生r   熊谷さんr全体r      

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