mark 遠野文化フォーラム報告


<「遠野文化フォーラム伊能嘉矩生誕150年―郷土研究と台湾研究の生涯を巡って」報告>

 

【遠野文化フォーラム・1日目】

日時 平成29年8月20日(日)開演13:00
場所 あえりあ遠野 交流ホール
内容
*遠野市・国立台湾大学図書館 文化交流協定書締結式
本田 敏秋(遠野市長)×陳 光華(国立台湾大学図書館館長)
*特別展記念講演「伊能嘉矩と台湾研究」 呉 密察(国史館館長)
*表彰/遠野文化賞、佐々木喜善賞
*遠野遺産、遠野こだわりの「語り部」認定証交付式
*遠野遺産活用事例報告
*シンポジウム/「日本と台湾の神話・伝説・昔話」
パネリスト     呉 密察(歴史学者・国史館館長)
           三浦 佑之(千葉大学名誉教授)
           山田 仁史(東北大学准教授)
コーディネーター  赤坂 憲雄(民俗学者・遠野文化研究センター所長)

報告:
 伊能嘉矩生誕150年の節目を迎えた今年は、遠野市と国立台湾大学図書館との文化交流協定書締結式で幕を開けました。
続いて遠野市立博物館で開催されている特別展に関連して、国史館館長・呉密察氏による記念講演が行われました。呉館長は、伊能の台湾研究の業績と、伊能の死後、その研究は台湾社会にどのように評価されたのかといった二つのテーマから論じました。「90年代に入ると、原住民について研究した伊能の著作は台湾語に翻訳され、台湾で出版されるようになった。このことから、伊能の膨大な台湾研究から台湾文化や歴史に関する知識を得ようとする欲求が社会に広がったと言える。伊能が残した資料は現在の台湾社会において大変有意義なもの」と力説しました。

 遠野文化賞は、遠野の豊かな文化資源を発掘、調査研究、伝承または活用し、文化の振興に寄与した人に授与するもので、今年の受賞者は「遠野昔話語り部の会」です。同会は、遠野の昔話の魅力を伝えているほか、昔話の語り部の指導を行うなど、後継者育成にも力を注いでいることから受賞が決定しました。表彰式では会長、副会長のほか会員10名が登壇し、遠野の木材で作られた楯が授与されました。

  「日本のグリム」佐々木喜善の業績を記念し、遠野や『遠野物語』に関する自由な作品を募集した佐々木喜善賞には20件の応募がありました。今年から論文の他に小説や絵画、写真、エッセイ、映像など対象を拡充。その中から、都築隆広さんと十凪高志さんによる小説イラスト『長者屋敷の寝られぬ座敷』が選ばれました。この作品はファンタジー小説で、マヨヒガや座敷童、カッパなどをモチーフにしており、喜善や『遠野物語』との関わりをきちんと押さえながら現代の遠野を若々しい感性で描き、遠野の不思議さが見事に活写されていることが評価され、受賞が決まりました。
  この佐々木喜善賞には通常「佳作」はありませんが、今回は最後まで選考に残り優れた作品であった2点に対し、特別に「佳作」を設けて表彰しました。
  佳作1作品目には、辻村博夫さんの随筆「飢餓の記憶 遠野物語遠景」が選出されました。飽食の時代においてショッキングなテーマである飢餓を取り上げ、『遠野物語』の原点として忘れてはならない「記憶」に気づかせてくれた作品です。
  2作品目は、立花紘さんの映像「遠野 馬好き物語」で、じっくりと時間をかけて丁寧に撮影されており、ドキュメンタリーとして好感が持て地元民の温かな眼差しで捉えた馬と人の暮らしに心和むものがあったことが評価され、受賞しました。
都築さんと十凪さんには楯が、佳作の辻村さんと立花さんには賞状がそれぞれ授与され、受賞者に大きな拍手が送られました。

 遠野遺産認定証交付式では、新たに遠野遺産に認定された山谷獅子踊り保存会(小友地区・遠野遺産第150号)に認定証が交付されました。今後、地域と市が一体となって「遠野遺産」の活用・保護が行われ、活性化に繋がることが期待されます。
また、特別サポーターを含めた遠野こだわりの「語り部」に認定された41名への認定証交付式では、代表として登壇した8人に遠野産木材で製作された認定証が授与され、参加者から祝福と期待が込められた拍手が送られました。これで遠野遺産認定件数は150件、語り部の認定者数は841名となりました。

  遠野遺産活用事例報告では、「遠野町南部ばやし保存協議会」会長の菊池秀智さんが、「遠野南部ばやし」(遠野地区・遠野遺産第25号)の活動について、お囃子をBGMに報告しました。
  菊池会長は、学校の改築で出た廃材を用いて屋体共同収納庫を制作したことや、祭り近くになると周辺の環境整備も行っていることなどを発表。近年は、山車の押し手やまかないさんの確保に苦心しているが、大学生や30年間欠かさず参加している南部ばやしファン々に支えられている、次の世代へ繋げていきたいと決意を新たにしました。

  シンポジウム「日本と台湾の神話・伝説・昔話」では、パネリストの先生方とコーディネーターの赤坂憲雄所長が壇上で議論を交わしました。その中で、「台湾は非常に多くの言語と民族が存在したため、言語はそれぞれのアイデンティティー、自分自身の拠り所だった。嘉矩は言語学専門ではないが、原住民族の中に飛び込んで調査を行い、その言葉を記録として残している。これはその後の日本、台湾、そして世界の神話や昔話を比較研究する上で基礎的な資料として機能している」と語られました。最後には、こうした交流を通して台湾の文化・言語・関わりなどを改めて考え直すと、遠野発の大学者・伊能嘉矩を起点に新しい繋がりが見えてくる。それを若い世代にさらに発展させてもらいたいとまとめました。
HP締結式

HP文化賞  HP喜善賞HP認定  HPシンポジウム

 

 

【遠野文化フォーラム・2日目】
日時 平成29年8月21日(月)開演10:00
場所 あえりあ遠野 中ホール

内容
*シアター「映像で知る台湾原住民の伝統と現代」
*トークライブ「遠くて近い!?台湾と遠野、その文化の魅力を語る」
   赤坂 憲雄(遠野文化研究センター所長)×邱 淑珍(翻訳家・伊能嘉矩研究者)

報告:
 初めに順益台湾原住民博物館制作の映像を上映し、台湾原住民の特徴や伝統文化を紹介しました。
 トークライブは、台湾と遠野を繋ぐ新たな視点で展開されました。邱さんは、「台湾の原住民はそれぞれ言葉も文化も異なるが互いに影響し合い歴史を築いてきた。」と話すと、赤坂所長は「日本も地域ごとに文化が異なり、その中で排除された人間を「山人」と呼んだ。漢民族によって山へ追いやられた台湾原住民と、日本の「山人」が重なりますね。柳田國男の「平地人を戦慄せしめよ」という言葉には嘉矩の研究を仲立ちに、歴史を振り返り山へと追いやった人々を思い出せというメッセージが込められているのかもしれないと発言しました。
 途中、台湾の温泉地の話題になり、参加者に配布された台湾の地図を提示しながら説明をしました。台湾は暑い気候のため温泉の価値は低いものでしたが、日本統治時代に道路が整備されると温泉が観光地として見直されたとのことです。赤坂所長が「この中で台湾の温泉に行ったことがある方はいますか」と会場に呼び掛けると複数の挙手がありました。ある男性は「自分が訪れた時、温泉で水着を着用する人が多いと思った。台湾の人は日本の温泉に入る時に戸惑いはありますか」と質問したところ、邱さんは「今の若い人はほとんど抵抗がないようだ。私は留学した時にお風呂屋さんに行くかどうか一週間迷いましたが」と話すと会場に笑いが溢れました。
 質疑応答でもたくさんの人の手が上がり、講師のお二人が一つ一つ丁寧に回答すると、熱心にメモを取る人の姿が見られました。
 両日共、会場内外には台湾観光のポスターや関連図書コーナーが設置され、多くの人が手に取り閲覧していました。これまで台湾にあまり関心がなかった人も、この節目をきっかっけに台湾を身近に感じたのではないでしょうか。

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カテゴリー 遠野文化フォーラム