mark 遠野文化フォーラム報告《※終了しました》


<「遠野文化フォーラム―『遠野物語』の新時代」報告>

【遠野文化フォーラム・1日目】

 日時  平成28年8月21日(日) 開演13:00(開場12:30)
 場所  あえりあ遠野 交流ホール
 内容
*表彰/遠野文化賞
*遠野遺産、遠野こだわりの「語り部」認定交付式
*遠野遺産活用事例報告
*基調講演/「京極夏彦×柳田國男『遠野物語』」
      小説家 京極夏彦
*シンポジウム/「『遠野物語』の新時代」
       パネリスト 京極夏彦、東雅夫、三浦佑之
       コーディネーター 赤坂憲雄

報告:
 遠野文化賞は遠野の豊かな文化資源を発掘、調査研究、伝承または活用し、文化の振興に寄与した方に授与するもので、今年の受賞者は小説家の京極夏彦さんです。京極さんは、2013年に柳田國男の『遠野物語』を再構成した『遠野物語remix』、『遠野物語拾遺』を再構築し“語り直し”を行った『遠野物語retold』をそれぞれ出版しました。今年の4月からは河童や迷い家(マヨイガ)などを題材とした「えほん遠野物語シリーズ」も刊行しています。作品を通じて『遠野物語』の新たな解釈を広め、これからの発展につながる功績が認められ、受賞が決まりました。表彰式ではお馴染みの黒い手甲・黒の和服姿で登場。遠野産の木材でつくられた盾が授与されました。
 その後「遠野遺産」の認定証交付式では、新たに認定された団体に認定証が交付されました。今後地域と行政が一体となって行う保護・活用が期待されます。
 また、遠野こだわりの「語り部」に認定された56名への認定証交付式では、代表として登壇した9名に、遠野産材で制作した認定証が授与されました。参加者からは祝福と今後の活躍に期待を込めた拍手が送られました。これで遠野遺産認定件数は149件、語り部の認定者は800名となりました。今回新たに認定された遠野遺産は以下の通りです。

遠野遺産 第144号 新里の愛宕神社(遠野地区)
     第145号 卯子酉神社(遠野地区)
     第146号 程洞稲荷神社(遠野地区)
     第147号 長岡大日神社(綾織地区)
     第148号 鷹鳥屋獅子踊り(小友地区)
     第149号 下同心丁枡形と法華題目の碑(遠野地区)

 遠野遺産活用事例報告では、遠野遺産の第136号に認定された上郷町佐比内の「熊野神社・六角牛大権現」の取り組みについて、上郷町第5地区自治会長の菊池哲さんが報告しました。今回紹介されたのは、熊野神社の参道と境内の整備です。参道は、上りやすいよう傾斜を緩めて、砂利を敷き、ぬかるみが酷い粘土質の境内の舗装工事が地域住民の手で行われました。その様子をスライドで紹介した菊池さんは最後に、「整備をして終わりではなく、これまで以上に地域の宝、遠野遺産として守っていきます」と地域主体で活動する重要さを強調しました。
 基調講演「京極夏彦×柳田國男『遠野物語』」では京極さんが、えほんシリーズを刊行するにあたっての裏話等も交え、小説家ならではの視点から『遠野物語』について語っていただきました。「『遠野物語』は、100人が読めば100通りの解釈ができる。それは喜善が語り柳田が書き留める過程で割愛された部分があるから」とし、「『遠野物語』はこれまで民俗資料・文学作品として高い評価を受けてきましたが、それはある一面からの見方に過ぎず、もっとたくさんの捉え方をしてもよいと思います。」と話しました。そして、「これから先は日本文化の中で、遠野という土地と遠野ならではの文化がどういう形で機能しているのか、ということを評価するべき」と今後目指すべき方向性を示しました。
 シンポジウムでは京極夏彦さん、東雅夫さん(アンソロジスト・文芸評論家)、三浦佑之顧問(立正大学教授)をパネリストに、コーディネーターは遠野文化研究センターの赤坂憲雄所長が務めました。それぞれの立場から『遠野物語』について議論を深め、文学的、心霊学的な観点からのみならず、柳田や喜善、水野葉舟、泉鏡花のキャラクター性といった話にまで発展し、まさに百人百様の掘り起こし方ができる『遠野物語』の魅力が光った内容でした。

HP夏彦

遠野文化賞を受賞した京極夏彦氏
HP四人衆

『遠野物語』について語る(左から)赤坂所長、三浦顧問、京極氏、東氏

【遠野文化フォーラム2日目】

 日時  平成28年8月22日(月) 開講9:30(開場9:00)
 場所  遠野市立図書館1階視聴覚ホール
 内容  *ショートフィルム上映/「遠野の年中行事」
     *トークライブ/「写真と遠野」
      パネリスト  新井卓(写真家。第41回木村伊兵衛賞受賞者)
             内藤正敏(写真家、民俗学者。平成26年遠野文化賞受賞者)
      コーディネーター 赤坂憲雄(遠野文化研究センター所長)

報告:
 遠野市立図書館で開催された遠野文化フォーラム2日目は不安定な天気でしたが、県外からも多くの方に来場いただきました。
 はじめに遠野市立博物館が製作した「遠野の年中行事」を放映し、みずき団子作りやしし踊りによる門付けの様子などの年中行事を紹介しました。中には今はほとんど行われなくなったものもあり、懐かしそうに目を細める人もいました。
 トークライブでは、はじめに新井卓さんに作品をスライドで紹介していただきました。新井さんは、日本でも数少ないダゲレオタイプ(銀板写真)の技術を用いる写真家で、神奈川県川崎と、遠野に拠点を置いて制作活動をしています。「遠野は光や水、空気、石が他の土地とは違う」と話し、「遠野はいわば盲点。遠野がなければ他の地が見えない、大切な盲点です」と制作における思いを語りました。
化学反応を駆使して「偶然のアート」を生み出す写真家の内藤正敏さんは民俗学者の顔も持ち、今回は東北の民間信仰をテーマにした作品を解説していただきました。独特の視点で切り取られたモノクロ写真からは実際に目に見えるものだけでなく、その場の雰囲気やモチーフの声、色彩などが感じ取られ、内藤さんが繰り返し強調した「見えないものを見る」ということを納得させられる講演でした。
 赤坂所長は最後に、「見えないものが写り込む遠野という土地は、写真との親和性があると思う。同時に、優れた写真家たちが生み出す意外性や偶然、化学のとんでもない反応もみんなで楽しめるのではないか」とまとめました。

HP新井

          新井卓氏       

HP内藤

          内藤正敏氏

HP三人衆

「写真と遠野」について語り合う出演者。(左から)赤坂所長、内藤氏、新井氏

カテゴリー 遠野文化フォーラム